持続可能な農業

ナチュラルワインについてOIVへ一言

22 1月 2021

数日前の12月18日、ナチュラルワインだけに的をしぼった意見交換会をOIV主催のウエビナーで見ていたのだが、OIVがこのテーマを取り上げたのは大きな驚きだった。

このイベントは12月3日のOIV総会で採決された持続可能なブドウ栽培とワイン造りにおける18の方策を受けて行われたものだった。

OIVのウエビナーはブドウ栽培とワイン造りについて新たに再考する道を世界的に広げたという点で画期的な出来事だったとおもう。

しばらくペンを執ってこなかったが、あの議論を見ていて私も久々に考えを書いてみようかと思う。

ブドウ栽培でもワイン造りにおいても、科学技術の進歩は大きな成果をもたらした。

ブドウづくりではそれによって栽培環境がかえりみられることなく、持続可能なレベルを超え、生産性を追求するあまり汚染や土壌劣化などのネガティブな結果を引き起こすことも時として起きた。

ワイン造りでは、数多くの寛大なる新技術や新しい添加物などがワイン法を根拠に導入され続け、そこそこの品質のワインがどこでも作ることが可能となった。

しかしながら、こうした技術の進歩は経験と才気に満ちた勇気ある大多数の素晴らしい生産者の信念を曇らせるものではなく、彼らが作り出すワインの本質を変えるものではない。

ナチュラルワインとは使われるブドウの価値、その栽培環境と収穫も含めてどのように栽培されたのかという大切な価値をまだ理解していない人たちの関心をひきつけ、それを考えさせる単なるきっかけなのではなかろうか。すでに素晴らしい多くの生産者も、より自分の土地にあったブドウ栽培とより干渉のすくないワイン造りを行い、ワイナリーで起こる毎年違う生化学反応を単に「サポートする」ことに徹すれば、さらに成長することができるはずだ。

ミレニアル世代が地球環境に大きな危機感をいだいている点もとても画期的なことだと思う。ライフスタイル、ファッション、旅行、食生活などに関する価値感そのものがどんどん覆されており、特に食に関してはより明確に健康志向が進んでいる。

また、環境がテーマのイベントはより一層その重要度を増しつつあり、環境やEUのサステイナブルに関連する規定や投資がこれほど重要なことは未だかつてなかったと言えよう。

ナチュラルワインとは欠点がなく美味しくあることは言うまでもないが、食品に求められるように偽装がなく本物であること、体に良いこと、生産地域の環境が守られていること、そして持続可能な農業から生まれたものであるべきだ。

ナチュラルワインは今や世界中で飲まれ、世界的な有名レストランでもオンリストしている店もある。すでに十分な認知度があるからこそ、より一層の努力と科学的な知識をもって品質の向上に努めなければならない。

ナチュラルワインを評価することにおいては先駆者である日本について一言書き留めたい。日本の消費者は30年以上にもわたって生産地域と生産者、そこで暮らす人々が一体となった調和のとれたワイン造りの大切さを理解し、私たち生産者への大きな励ましを与え続けてくれている。それに応えるためにも、味だけではなくどういう環境で作られたのか、その環境はしっかりと守られているのかといった農業生産の本質を忘れてはいけないと常に思っている。

人類が今までなんとかうまく守り続けてこられた奇跡のもの、それがワインだ。

ナチュラルワインづくりは深い専門性と、ブドウ栽培に適した環境が求められる。またいつもリスクを伴い生産拡大には限界があるものだ。それぞれの環境に合ったブドウ栽培とそこで長年培われたワインづくりはなくしてはならない大きな財産であり、これこそワインの将来そのものだ。

良いワインができるところに生まれた人に多くの幸せが宿る。

レオナルド ダ ビンチ

(日本語訳 川村武彦)

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