ワイン

本質を突き詰める(後半)

2 10月 2017

歴史的に食べ物とワインのつながりは、特に大河文明(チグリス、ユーフラ テス、ナイル)と地中海沿岸を始めとする広い地域で切っても切れないもの であった。この素晴らしく洗練された食とワインは相互に高め合ってはかけ がえのない価値を創􏰀し、経済を育み人々の生活になくてはならない喜びを 与え続けてきた。ここでは便宜上、食物とワインを分けて考えてみたい。

食とワインとは切っても切れない関係ないにあり、食事とワインがピッタリ あったときには神々しくもさえあるが、その組み合わせに限界はない。ワイ ンは食に ”従う”ばかりではなくワインだけでもその深い世界を楽しむこと ができる。いずれにせよワインは喜びと感動の源なのだ。

ワイン作りで生産者が直面する大きな問題の一つは、ブドウづくりにある。 「自然なワイン」とはまさに畑とぶどうそのものであり、健康で完璧に成熟 したぶどうが自然な発酵プロセスだけによってワインとなる。 従って、しっかりとブドウが出来てさえいれば、ワイン作りはほとんど終わ ったようなものだ。工業ワインは使われるブドウからしてその品質に限界が あり、いくら収穫後にワイナリーで様々な処理をし、ときには有害物質をも 添加して加工してもそれ以上に美味しいワインになどならない。

なんの加工もなしで自然な方法で作られたワインは時として色や艶、揮発酸 の値などに問題もあり得るが、間違いなく言える事は自然環境を考慮して作 られ、絶対に体に悪くないという事だ。フランスで既に検討され始めたよう に、自然に作られたワインのためだけに分析項目を見直し客観化する必要が あるのだが、イタリアでは未だに自然に作られたワインとそうでないワイン という全く異なるものを区別することなく、同じ基準で比較している。

何れにせよ「加工」によって生まれる工業ワイン/普通のワインと有機もし くは自然に作られたワインとは全く違った二つの世界であり、競合する事は 絶対にない。自然なワインと普通のワインとは根底から違うのだから、まず はそれぞれのワインに適したテイスティング方法を始めとして異なった基準 で考慮する必要があるだろう。

オリ引き直後の自然につくられたワイン

食材ですでにその傾向が見られるように、消費者はより自然環境に配慮して 作られ、からだに良いワインを求め始めており、いわゆる”ワインのエキス パート”がいうワインの常識などにまったく固執していない。 消費者が求める一番大切な事、それは飲む人のからだに負担をかけない事と 同時に、畑と周辺の環境が守られ畑で働く人の健康が保たれているかどうか という事なのだ。

ワインを飲んで悔いている人の声をよく聞く。素晴らしい食材、最高の料理 だったのに..ワインのせいで頭がズキズキと痛い..。 こんな状況がいつまで続けば気がすむのだろうか?ワインが喜びを台無しに し、音もなく健康をも蝕んでいく….。

誰かこの状況に立ち向かう人はいないのだろうか?

真っ当な有機ワインや自然なワインを作るにはまずそれを可能とする自然環 境が必要だ。同時に、ワイン作りの技術はもちろんだが、時として起こりう る大きな経済的損失のリスクに耐えられるだけのしっかりとした経営能力も 必要となる。なにしろ不確実、不安定で想定外の事に対処しなければならず、 リスクを排除し安定を求め確実に安定した品質を目指すワイン工業とは正反 対の道だ。

ワイン自体アルコールを含んでいて体にとって害ともなり得る。 考えてほしい、周辺環境を汚染する農薬散布までして、収穫後に体に害とな る物質も加えて加工処理しなければ売れないようなワインを大量に作る必要 が一体どこにあるというのか?

時としてワインの味を評価するのに随分と大げさな表現が見られる。 例えば、よく使われる「ミネラル感」というのがそれだ。 土中のミネラルがワインの味に影響していることに言及しているようだが、 土中のミネラル分自体はワインの味には一切影響しない。 実はこのような味の特徴は、リースリングなどの特定の品種を除いて、生物 多様性がもたらすのだ。その多様性とは、環境が守られ、樹齢の古いブドウ を大切に受け継ぎながら栽培が続けられてきた土地で育まれるものなのだ。 ところが、工業ワインを作る場合の畑づくりはこの点を全く考慮しない。 畑を「􏰀成」して地形を変え、土壌を破壊し、行きすぎた機械化と農薬、除 草剤の使用を前提とした、単一栽培の大規模な畑をつくる。そして現代の栽 培方法には合わないからとその地に根付いた品種もその遺伝子的価値をも一 切考慮せず樹齢の古いぶどうを簡単に抜き去り、古い畑を潰して樹齢の短い 畑を作るのだ。当然、歴史的な美しい景観も破壊されてしまう。

未来のために過去を捨てても良いという道理はない。 昔からつたえられる経験則的な知恵や教え、合理的には説明できないような ことも大切にしよう。今、科学がその秘密を徐々に解明しようとしている。 伝統の知恵も科学も両方とも大切なのだ。

自然なワインを作るとは一筋縄ではいかない困難な仕事だという事がこうし た事からも分かるはずだ。だからこそ、自然なワインをつくる生産者同士の 争いは不要だ。他者を非難し自分のやり方だけが正しいと言い張る必要もな い。自然なワインの世界には十分にスペースがあり作り手は皆それぞれが美 味しいと信じるワインを作れるのだ。

ワインが表面的な味を超えて、本質を突き詰めた自然の産物の主役の座に返 り咲けるようにと20年以上にわたってイタリアの生産者たちを励まし続け てくれている日本の消費者の方々感謝申し上げたい。 さらに、ロンドンでマスターオブ ワインを取得後に正反対な世界である自 然なワインに注力し、この世界に強い刺激と相乗効果をもたらしてくれてい るイザベル ルジェロン氏にも感謝申し上げたい。

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