イタリアの宝
イタリア農業において、個性的で多様な美しい景観を作り出してきたのは常 にぶどうであった。経済的、社会的な変化の中で、ぶどう畑は拡大し、ある いは縮小を余儀なくされながらも生きながらえてきた。 この貴重な財産をしっかりと守り続けていくためには、長い歴史を紡ぎ多く の文化遺産を残してきたいにしえのブドウ栽培についてより深く理解せねば ならない。現代のぶどう栽培モデルは少なくとも次の二つに集約できる:
– 機械化が支配する穀類や野菜の大規模栽培と変わらない集約栽培。
– 様々な環境下で、規模、栽培方法、技術などそれぞれに違う職人的な栽培
この二つの経済活動は作られるものが全く違うため競合する事なく共存でき る。大規模ブドウ栽培は世界市場での競合に打ち勝つためブドウ生産コスト を抑制し、ワイナリーでワインを加工処理して作る。似たり寄ったりで全く 個性のない大量生産ワインに違いをもたらすのは、唯一その「産地名」だけ である。
一方、ワイン職人の存在自体に大きな価値があるが、彼らが地道に生み出す 個性的で健全なワインの価値は計り知れない。ワイン職人の作るワインは工 業生産ワインとは全く違い、同じ基準で比べてはならない。時として色や透 明度、揮発酸の値やオリなどの面で一般的な基準からすれば「欠陥」と見な される点があるかもしれないが、ワインの価値である純粋さと健全さを有し ワイン全体の調和が取れていれば全く問題ではない。 イタリアワインの素晴らしい歴史を築き、その価値を海外にまで広めてきた 本物のワイン職人こそこの国の文化的価値を守り、そして時には生産性を落 としてでも環境に細心の配慮をしてきた保護者でもあった。 イタリアの至るところに多くの職人的な生産者がいることをもっと知って欲 しい。彼らこそイタリアの誇る調和のとれた、汚染のない健全な農地からな る美しい景観を守り、それぞれの地域に残る伝統の味を残そうと、必ずしも いつもその自覚を持っていないかもしれないが、頑ななに働き続けているの だ。
有機やビオディナミの認証の枠に収まらない熟練のワイン職人たちは、ワイ ン産業の中ではとてつもなく大きな財産であり、海外へももっと紹介される べきだ。我が国が誇るほかの産物とともに、職人りのワインは海外へ「イ タリアだけが作れるもの」として羽ばたいて行くだろう。
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